UX開発の分野での「アクティングアウト」とは、製品の使用シーンやサービスシーンを「身体」を使って即興で演じるみることによって、意識化されていない行為や、感覚(快、不快、違和感)に着目し、その気づきを開発に活かしていく手法です。
心理学の分野でも聞かれる「アクティングアウト」という言葉は、無意識下にある感情を制御するために衝動的な行動として現れることを意味しますが、UX開発においても、意識(頭)になかった些細な感覚が演じてみることによって、行為として顕れてしまうという身体感覚から気づきを利用する点では同じです。
アクティングアウトは、主に開発の「理解」→「発想」→「剪定」→「検証」→「プレゼンテーション」の4つのフェーズで使用することができます。アクティングアウトによる「身体性をともなった実感覚」によってチーム間に確かな共有感覚を生み出すことによって、より確かな感覚を得ながら進めることができます。
ワークショップは、テーマや開発のフェーズによってケースバイケースですが、主に発散フェーズと収束のフェーズとして、ワークショップを2回に分けて行います。アクティングアウトは、主に1回目の発散のフェーズで用います。1thWS(発散)では、既存の概念にやしがらみに捉われることなく参加者がアクティングアウトによって自由に発話する中で発想を広げることを目的として、ワークショップを設計します。2ndワークショップでは、1thWSで出てきたアイデアや気づきを、熱を少し冷ましてから、再度ビジネスの制約などに照らし合わせた中で、再度アイデアのカテゴライズとコンセプト設計を行い、ビジネス視点にのっとった開発のロードマップを描きます。
開発において大切なのは、アイデアを実装するために同じ方向を向いて切磋琢磨していくプロジェクトチームの存在です。アクティングアウトを開発の中に取り入れることのメリットは、「開発」と「チームビルディング」の両方を同時に実現することができる点です。アクティングアウトは、「やって・みる」というスケッチだと言いましたが、身体をつかって、同じ空間で「やって・みる」ことで、お互いの間に共通の感覚がうまれ、気軽に気づきを言い合いながら、アイデアを進展させていくことができます。また、ワークショップという場を設けることによって、マーティング担当者、デザイナー、企画担当者、技術者など、さまざまな立場の人間を一同に介することで、それぞれの価値観や立場や制約などを知り合う好機にもなります。身体感覚を共有しながら、お互いが意見を出しながら生まれたアイデアは、赤ちゃんのようなもので、大切にみんなで育てていくきっかけを与えてくれます。