共創空間の実験

2022.6.24 @troismaison
参加メンバー:藤田次雄、三宅由莉、木綿昌之、いわた花奈、大崎良弘、宮谷直子、出口愛

オンラインの打ち合わせでは、なかなか不確かな部分のすり合わせって難しい。だからこそコロナが少しおさまる度に、ここぞとばかりに対面の打ち合わせが決行される今日この頃。
しかし、この数年ですっかりオンラインでの打ち合わせが日常化されてきたこともあり、会って打ち合わせすることが、少々イベント化されてきたなっていう感じがしています。以前は少人数で会議室で、ぼそぼそと「どうしましょうかね〜」なんて打ち合わせ(相談)していたのが、最近ではこの機会にとばかり人数が増えていき、いつのまにやらスライドでの発表形式になったり、ワークショップ状態になったりしています。

Act-Oでは、学習環境デザインの知見をベースにワークショップ空間へのこだわりは前々からあるのですが、打ち合わせの「空間」といえど会場設定を誤ると、空間が狭すぎてその場に集まっているのに全員が自分のPC画面を見て、オンライン上にカタカタとキーボードで打ち込んでいくという奇妙な光景になってしまったり、、みんなで頭をつきあわせて書き込みながら考えたいのに、空間がプレゼンテーションに向く配置になっていて、向き合って話せなかったり、、。

空間の力は恐るべし。

せっかくの対面なのに、空間のせいでうまくいかなかったケースから思うに、共創空間で注意すべき点は以下の3つ。多分。
この3点を注視して空間づくりや空間選びをおこなえば、共創はファシリテータがそれほどがんばらなくてもよい方向へ転んでいくはずです!空間に頼れるところは頼りましょう。

・Feel free to talk:気軽に話せる。
・Feel the reaction:お互いの反応が感じられる。
・Joint attention:共同注視できる。(モニター位置や大きさ、グラストの場所など)


というわけで、今回のAct-O研究では、共創のための「空間」を実際に机の配置や高さなどを動かしてみて、自分たち自身の身体感覚を総動員しながら、3つのポイントを中心に検討してみました。

配置変えに使用したモノ

話しやすいテーブル幅

写真1)は企画会議の基本配置です。50cm×100cm×h70を6枚重ねて机幅100×3000 の大きなテーブルをつくりました。幅100cmは机の真ん中に置かれた資料を見る時も座った体勢のまま資料を手にとったり覗き込んだりすることができます。対面に人が座っても圧迫感が少なく話しやすい距離です。ちなみにダイニングテーブルで最も多いのが90cm幅。80cm幅だと少し前の人との距離感が近すぎる感覚があります。パーソナルスペース*は人それぞれですが、個人的には、家族でもなく恋人でもない相手との打ち合わせは100cmぐらいがちょうどよい気がします。

*パーソナルスペース:R・サマーという心理学者が提唱した他者と自分との不快に感じない限界範囲。対人距離とも呼ばれ、心理的な縄張りのこと。

写真2)は、中央にスペースをとり、対面との距離が開いていくにつれて話にくくなるかどうかを検証しました。資料を覗き込むにも遠く、離れていくにつれて気軽に話しづらくなってきます。会議室でよくみられるコの字型のレイアウトでは、頭を付き合わせて考えるというような作業には向かないことがわかります。

写真1)8人以上の企画会議にはこの配置で行います。
写真2)中央にスペースをあける会議室でよく見られるコの字型のレイアウト。

サミット型で全員が代表

写真3)のように机を六角に配置してみました。先ほどの長方形のテーブルでは、スクリーンに近い方がよく話す人だったり、出口付近が下っ端の席みたいな、上座、下座のような意識が生まれるのに対し、この配置では、サミットのように全員が対等の立場で発言しなければ、という参加意識が芽生えます。
写真4)では、六角の中央に人が入ってプレゼンするとどうなるかを検証してみました。こちらは低い椅子に座らされると四方八方から監視されているようで、萎縮してしまい思わず方をすぼめてしまっています。写真5)これに対して少し高い位置から見下ろしながら話すと、途端に萎縮する気持ちはなくなり、天界から下々を見下ろすかのように、身振り手振りが大きくステージでショーをするかのような振る舞いになります。

写真3)六角に机を配置
写真4)中央に座る(萎縮)
写真5)中央の高さを変える(ステージ)

モニター位置を考える

みんなで同じ画面や資料をながめる(共同注視)をどう設定するかは、共創の場のポイントになってきますが、六角に机を配置したことで前後の概念が取り払われのですが、その場合みんなで共同注視するためのモニター位置をどこに設置するかが問題になってきます。モニター位置が壁でなければいけないという固定概念を外して考えると、床、天井も可能性としてはあります。天井にモニターを映してみると、首が痛いので、寝転がって相談するとかもおもしろいねなんてアイデアも出てきます。中央の床に映せば、立ち上がって覗きこみます。中央にモニターを映す台があってもいいねとか、もはや机は取り払おうとか。モニターが自由に動かせれば「場」の自由度が高まります。

天井モニター 見上げる
床モニター 見下ろす

L字」でつなぐ

L字に机を配置してみると、お互いの顔を見ながら、かつ外の人が入ってきやすい半オープンスペースがつくれました。
またこの配置は、オンライン会議をハイブリットで行う場合に適しています。会場の人全体を写すことができるのと同時に、表情や気配を同時に感じながら、遠隔の相手も置き去りにせずに会議ができそうです。

写真6) L字でオンライン会議

バーカウンターのマジック

30cm角のキューブを天板と天板の間に入れて、机の高さを100cmにして、仕事の相談をふたりでみるというスチュえーションをつくってみました。周りから見ていてまず感じたのが、仕事をしてる姿がかっこいい。ってこと。ハイチェア、あるいは立ちながら相談することで、目線が上がるからなのか、ワンランク上の仕事をしている気持ちになります。笑
仕事をしてる姿がかっこいい。仕事への意識を上げるという意味ではとても大切なことですね。

写真7)立ちながら打ち合わせ
写真8)バースタイル


まだまだいろいろ試してみたかったのですが、バータイムへなだれこんだので、ひとまず終了。笑
配置を動かすだけでこんなにも感じ方が違うのと、自然と人の行動を変えてしまう力に驚きです。
いろんな空間を用意するのはスペース的に難しくても、フレキシブルに変えられるものにしておけば、自由自在に共創空間はつくれます。

共創空間は、動かして考える!

「発想」とよっこらせっと動かしてみる「行動」なのかなと思います。

Report by Miyake Yuri